口の中の珍しい病気「歯原性のう胞」へのレーザーの応用

オークどうぶつ病院けやき 前谷です。

前回のブログでは、口の中のガンに対してレーザー手術器を使用したケースレポートをご紹介させていただきましたね。

早速ブログを見て来られて、治療を開始したワンちゃんもおりますが、あくまで根本治療ではなく少しでもQOLを改善したいという思いで行っている治療であることを再度お伝えしておきます。

今回は、同じく口の中にレーザー手術器を使用した珍しい病気の治療編をお送りします。

 

先日偶然に口の中にしこりを見つけたチワワの大吉ちゃんです。

いつも何をするにも嫌がったり怒ったりせず、目が合うと必ずしっぽを振ってくれる明るいワンちゃんです!

上の前歯の位置にやや黒っぽく見えるしこりがありました。

写真は麻酔下にてフラッシュ撮影しておりますので明るく見えますが、実際は黒ずんだしこりのように見えました。

 

麻酔をかけて精査したところ、透き通って見えますので液体が貯まっているのかなと細い針を指すと透明な液体が抜けてぺちゃんこになりました。

 

液体がたまっているということは「のう胞」といって袋の中に水がたまる構造の病変のようです。

そのままにしておくとまた水がたまって膨らんできますので、一部外側ののう胞壁を切り取りました。

 

さて、どう治療しましょうかね。。。

おそらく内側には水分を分泌する細胞があり、表面の穴がそのままふさがるとまた同じように水ぶくれが再発しそうです。

そこで、内側を裏打ちしている内膜をレーザーで蒸散・凝固してみました。

うまく行けば分泌細胞が死んで水分の分泌が止まり、組織が再生すればきれいに治るかなーと考えました。

中は大きな空洞となっており、その中にレーザー器具を入れてあちこちくまなくレーザー凝固しました。

 

ちょっと痛々しい写真ですよね。

術後はしばらく口元を触るとちょっと怒ってましたが、ご飯はしっかり食べて元気に過ごせましたよ。

3週間後に再診に来ていただいた時にはいつもの優しい大吉ちゃんに戻って、口の中もあんぐりとじっと観察させてくれるようになりましたね。

その時の写真がコチラです↓

 

とてもきれいに治りました。

念のため悪いものじゃないかどうか調べるため、切り取った外側の膜を病理検査に送ってました。

悪いものじゃなくて一安心♪ きれいに治りましたのでこれで治療終了です!

 

歯根膜などから発生する歯原性のう胞は、人ではたまにあるケースですが、犬では非常にまれな病気です。

治療としては、のう胞を袋ごと摘出するのがセオリーなわけですが、後々調べてみると、過去には今回の治療と同様にレーザー蒸散した報告もあるようですね。

何年やってても見たことないような病気や症状は来るもので。。。本当に毎日が勉強ですねぇ…