猫にもっとも多い腫瘍~リンパ腫

2019年09月04日 (水)

オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。

たまに病院を18:00までで閉院させていただくことがありますが、セミナー(勉強会)に参加してたりします。

ここのところ月1回のペースで参加しておりますので、ご迷惑をお掛けしておりますがお許しください。

つい先日は、「猫のリンパ腫」について勉強してきました。

 

 

猫の腫瘍の中で、「リンパ腫」という腫瘍はもっとも多くみられる疾患です。

血液の中のリンパ球という細胞の腫瘍ですから、リンパ球が分布するどこの臓器にも出てくる厄介なヤツなのです。。。

 

例えばこんなところ…

 

胸の中の縦隔リンパ節というリンパが腫れて、それに伴い胸に水がたまって呼吸が苦しくなります。

猫白血病ウイルスをもった若い猫ちゃんに多いタイプです。

 

 

 

次は鼻の奥、のどにつながる部分に小さなリンパ腫ができた猫ちゃん。

ここは息が吸いにくくなり開口呼吸(口を開けて呼吸)でとてもつらい場所です。

鼻の中は猫ちゃんのリンパ腫のできやすい場所のひとつなんです。

 

 

 

消化管にもできます。胃の中に潰瘍を伴ったしこりができています。

食欲がなくなり、よく吐くようになります。

 

 

 

最近増えているのが小腸にできる高分化型(良性に近い)リンパ腫なんかもあるんです。

ずっと下痢が治らずやせてしまいます。内視鏡を入れると、腸の粘膜がシマシマになってます。

 

 

 

先日、オークけやきの病院猫「アミカ」が亡くなったことをご報告させていただいてました。

実はアミカも最後は「リンパ腫」になりました。

 

この子はシニアになってからは本当に病気ばかりで…ずっと治療をしながら悠々自適に暮らしてました。

甲状腺機能亢進症になったお話は以前のブログでしておりましたが、続編を書こう書こうと思いながらも忙しく。。。

期待してお待ちいただいてた方がもしいらっしゃったら、たいへん申し訳ありませんでした。

 

その後、慢性膵炎になり、さらに糖尿病になってインスリンを打ちはじめ、しばらくすると慢性腎臓病となって点滴治療も開始しておりました。

 

そして今年の春から、よく吐いて下痢をしょっちゅうするようになり、お腹の超音波検査で、腸間膜リンパ節の腫れが見つかりました。

 

細い針を刺して生検を行った結果は、中〜高悪性度のリンパ腫でした。

詳しい説明は省略しますが、リンパ腫という悪性腫瘍は全身ガンです。

治療はいくつかの抗がん剤を組み合わせて毎週投与していく、「L-CHOP」や「COP」といった治療法をご提案します。

 

しかしアミカの場合は、超高齢であちこちの内臓も悪くなっていましたから、抗がん剤の使用はかえってQOL(生活の質)を落として寿命を縮めてしまうことが目に見えてたため、抗がん剤治療は選択しませんでした。

 

行った治療は、点滴や吐き気止めの注射、インスリン投与などの従来の維持治療に加えて、リンパ腫の進行をゆっくりするためのステロイド投与、小腸の慢性疾患で損なわれやすいビタミンB12の注射、自分自身の免疫を上げるための注射etc..

 

最後の最後まで、ぼちぼち好きな食べ物を食べながら、太くていいウンチをし、のんびり過ごしながら最期の時を迎えられましたので、これで良かったのかなと個人的には思っています。