レーザー手術機器がバージョンアップしました。

オークどうぶつ病院けやき 前谷です。

導入から1年経ちました、飛鳥メディカルさんの半導体レーザー「D-Lase V20」ですが、先日バージョンアップ作業に出しまして、作業が完了して戻ってきました。

できることが大きく変わったわけではありませんが、椎間板ヘルニアや関節炎などで患部にレーザー照射をする際に、より細かな条件設定が組み入れられ、さらに効果的な治療が可能となりました。

元々飛鳥メディカルさんには、とても評判の良い治療専用のレーザー治療器が別にあるのですが、その仕様に近いレベルになったのです。

 

例えば、椎間板ヘルニアの子にレーザー治療を行う場合、

プログラムの「慢性疼痛」を選択

体重を選択

その子に合った条件がプログラムされ、準備完了!

 

このように、治療内容や体重で細かく条件設定が可能になりました。欲を言えば、毛色や犬種などもっと細かい設定があればなお良いのですが・・・

毛の黒い犬種はレーザー光の感受性が良く熱がることも多いので、その場合は自分で設定した条件に適宜変更して治療を行っております。

椎間板ヘルニア治療のレーザーは、劇的な効果が期待できるわけではありませんが、患部を温めレーザーの効果で血流を改善し、炎症や疼痛を和らげてあげられますので、薬と安静だけの時よりもプラスアルファの効果を実感できるワンちゃんも多いものです。

 

最近どんどん増えてきているレーザーの使用症例は、ガンの動物の治療オプションとしての使用です。

小さなイボとりのレーザー蒸散は以前のブログでご紹介しましたが、最近はもっと大きくなった腫瘍に対しては、レーザー凝固という治療もしばしば行っています。

レーザー凝固とは、広拡散プローブという特殊な器具で腫瘍内にレーザーファイバーを穿刺し、腫瘍の内部でレーザーを照射するという治療法です。

レーザーを穿刺・照射された組織では、下の写真のような凝固巣ができます。(写真は鶏肉で照射した断面写真です)

矢印の方向から広拡散プローブでレーザーファイバーを穿刺してます。

 

中心部は黒く炭化し、さらに周囲は白くタンパク変性を起こしています。さらにその周囲は肉眼的には変化はありませんが、実は熱による腫瘍細胞へのダメージ巣、さらにその周囲にはレーザー光自体の作用による免疫細胞の活性化や血流改善などが重なるわけです。

ガン細胞自体にダメージを与え、その壊れたガンの断片が飛び散って、それを認識する自分自身のガン免疫を動かしたいという目論見の治療となりますので、動物自身の免疫力を上げる注射やサプリメントの併用などもご提案しております。

この小さな凝固巣を腫瘍内部にたくさん作ってあげることで、自分自身の免疫力などにもよるのでしょうが、上手く行けばガンが小さくなっていくのです。

表面のガンには局所麻酔で行うことも可能であり、悪性の口腔内腫瘍などでは全身麻酔下で行っております。

 

また、手術が難しい肺の腫瘍や腹腔内の大きな腫瘍などの場合は、以前のブログでご紹介したマイルドレーザーサーミアという温熱療法でガンの休眠療法(本人の生活の質QOLを改善して、ガンと付き合いながら元気に過ごす!)も行っております。

 

手術中のレーザーメスや血管シーリング(縫合糸を使わずに血管を切断)などなど、レーザーでできることは他にもたくさんあり大いに助けられているわけですが、さらなる改良・バージョンアップを重ね、ますますできることが増えていくことをぜひ期待したいですね!