腎臓への”黄色信号”を知る~犬猫用『FGF23』測定のご紹介

オークどうぶつ病院けやき 前谷です。

以前に、慢性腎臓病を早期発見できるかもしれない検査項目『SDMA』のお話をブログでしました。

今回も、新たな腎臓の外注検査『FGF23』のお話をしたいと思います。

ちょっとマニアックなお話なので、すごく興味がある方だけお読みいただければ幸いです。

 

検査をイメージしやすいものとして私が勝手に作りました。富士フィルムさん公認のものではありませんので。。。

 

富士フィルムさんが検査を実施している『FGF23』という検査項目を、最近私も採用して測定を始めております。

これは何なのかというと、体の中に「リン」という物質が増えて腎臓に負担が掛かりそうになると、骨から分泌される物質がFGF23です。

FGF23は、①腎臓に働きかけ、リンをたくさん外に出さねば!あるいは②腸管に対しては、リンを吸収しないようにせねば!という2つの働きをすることで、血液中のリンを上昇させないようにするんですね。

 

難しいことはさておき、何のために役に立つのか?というところを簡潔に説明すると、

 

1.腎臓病の早い段階で上がってくるので、腎臓病の早い段階で「今後、腎臓病の進行に注意した方が良いんだ」という目印となる。

 

2.今の食事内容が問題ないかどうか?腎臓病用の療法食に変えた方が良いのか?

あるいは変更した後に、変えた効果が出ているのか?という食事を評価する指標となる。

 

大きくはその2つの意味で役に立つ検査だと思います。

1.に関しては、FGF23が腎臓病の予後(将来の見通し)に役に立つことが証明されています。

2.に関しても、FGF23が上がっていれば腎臓病用の療法食にすぐにでも変更した方が良いという判断になるし、療法食に変更することで数値が下がることもハッキリしているので、今の食事内容が適切かどうかの判定材料にもなるかと思います。

 

この辺りはとても難しいお話なので、このFGF23に関わる機構の1つ「クロト―遺伝子」というものを発見した腎臓内科医の黒尾誠先生の新書を読みました。

 

 

衝撃のタイトルでした!「老化加速物質=リン」「腎臓(リンの排出)が寿命を決める」とは。。。

読んで非常に勉強になりました。

腎臓への注意信号、黄色信号とはまさに納得の表現でした。

ヒトの医学においても、『FGF23』という項目は測定ができるそうなのですが、あくまでも腎臓病の検査としては保険適用外(自費診療)だそうです。

黒尾先生は、もし健康診断としてFGF23が測定できるようになれば、「早くから気づいて食事内容を見直すなどの対処をすることで、腎臓が悪くなって透析が必要になる患者さんがかなり減るんじゃないか」と仰っているわけですね。

 

そんなステキな検査が動物でも測定できるのですから、富士フィルムさんには感謝です。

動物も腎臓病は非常に多く、私たちの診察の中でも「腎臓が悪い子の点滴治療」はかなりのウェートを占めます。

特に猫ちゃんの腎臓病の多さは皆さんもご存知の通り。

こういった点滴治療に通うことになる動物たちを少しでも少なくし、早め早めに対処が出来ればまさに理想的ですよね♪

 

当院の看板犬、「ぐり」「ぐら」ちゃんたち兄弟も腎臓に弱点があるようです。

ここ最近は腎臓の標準的な血液検査項目に加えて、定期的にこの『FGF23』をモニターしながら、今の食事内容で大丈夫かどうか?警告信号は出てないかどうか?をしっかり監視しております。

 

とても難しい内容でしたね。。。

もしとことん突き詰めて検査などをご希望の方がいらっしゃれば、相談していただければ検査のメリットなどをお話いたします。

まだ症例報告や学術論文なども多くない検査ですので皆さんにオススメしているわけではありませんが、ご興味持たれた方はぜひお声かけください!