獣医療の進歩に驚いています…注射薬『サイトポイント』

オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。

今年もノーベル賞の時期となりまして、昨年の今頃は本庶先生のノーベル医学生理学賞受賞に沸いたのを思い出します。

 

現在ヒトの医学の創薬の分野は、免疫学の研究を礎に様々な新薬が開発されています。

その中の1つに「抗体医薬」というジャンルがありますが、ついに動物用の薬でも初めて抗体医薬が承認され、今年中には発売される見込みとなりました。

まさか私たち獣医師が、動物を相手にモノクローナル抗体製剤を注射する時代がもうすぐそこに来るとは・・・

獣医療の進歩には現場の私たちですら驚かされています。

 

zoetis様(米国)サイトよりお借りいたしました。

 

簡単に説明してみます。

1.研究によってガンやアレルギーなどが起こるメカニズムの細かいところ(どんなタンパク質が関わっていて、細胞の表面にあるどのボタンに結合して反応が起こるのか)が突き止められました。

2.その反応を引き起こすタンパク質に対して、反応が起こる前に未然にくっつけてしまう薬(抗体と言います)を体内に入れます。

3.そうすると原因タンパクが先に薬(抗体)とくっついてしまい、ボタンにはくっつかなくなりますので、そのピンポイントの反応だけを抑え込むことができるのです。

 

うーん。。。うまく伝えられてないでしょうか。

起こって欲しくない反応だけをピンポイントに抑え込むので、あらゆる臓器に対する悪影響が出にくく、逆に抑えて欲しくない有益な反応はそのまま残せるということです。

副作用はとても少なく、効果はとても期待できる治療と言えると思います。

 

 

このたびゾエティスから新発売される新しい薬は、『サイトポイント』という注射薬です。

アトピー性皮膚炎のかゆみを、月1回注射することで抑えてくれるかもしれない画期的な製剤です。

海外ではすでに発売されていますが、ついに日本国内でも年内に発売される予定という発表がありました。(正式な発売日はまだ未定です)

 

余談ですが、モノクローナル(monoclonal)抗体(antibody)製剤は、そのアルファベットを取って「〜マブ(-mab)」という名前がつく決まりになっています。

サイトポイントは、ロキベトマブという名前のワンちゃん専用に開発された薬なのです。

実は本庶先生の発見した『オプジーボ』という薬も、ニボルマブというモノクローナル抗体製剤なのですから、ノーベル賞だと世間を騒がせた薬と似たような薬が、ワンちゃん専用に開発されたんですから驚くばかりです。。。

今回はアトピー用製剤ですが、こういった薬の本命は、ガンや自己免疫疾患への適応だと思いますから、ゾエティスさんの研究開発には今後も期待したいですね。(ヒトの薬みたいに薬価がものすごく高いと手が届かなくなるんで、そういう意味では色々難しいんでしょうけど・・・)

 

サイトポイントがどのようにしてアトピーのかゆみに効くのか・・・

簡単に言うと、皮膚表面で起こったアレルギー反応から、神経細胞にかゆみを伝える信号物質である「インターロイキン(IL)-31」というタンパク質が放出されますが、このタンパク質をピンポイントに捕まえて仕事をさせないのです。

 

デュピクセントの作用機序の図をサノフィ社さんからお借りしました。

 

ヒトのアトピーの治療では、従来のステロイドなどの治療で効果が認められない中等度〜重度のケースで、『デュピクセント(デュピルマブ)』という注射薬が発売され、画期的な功績を上げているようです。

今回のサイトポイントが抑える相手は、デュピクセントのIL-4とIL-13ではなくIL-31だけですので、デュピクセントのように皮膚バリア機能を改善するような効果はなさそうなので、まったく同じような期待をしていいかどうかは半信半疑でいますが、いずれにせよこういった新しい治療オプションが加わるのは本当にありがたいことですね。

米国のzoetis社のサイトでは、他治療との併用も可能とありますので、注射をベースにかゆみを抑えつつ、スキンケアや外用・内服薬で+αの管理・・・なんてことが可能かなと考えております。

 

画期的な薬を開発してくれたメーカーさんには感謝しつつ、でも私たちはそれに安易に飛びつくわけではなく、しっかり吟味して従来の治療との比較や併用を考えたり、そのワンちゃん・飼い主さんにあった治療プランを提案していけるように日々精進せねばと思うところであります。。。

 

まだ発売未定の最新薬ですが、アトピー性皮膚炎のワンちゃんを飼ってらっしゃる患者さんで、もしご興味がある方はご相談ください。

猛勉強しなければ。