猫の膵炎

2016年03月26日 (土)

オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。

今日は猫ちゃんの膵炎についてのお話をしたいと思います。

新しい知見ですので、大変難しい内容となっております・・・

興味のある方は読んでみてください。

 

膵炎とは、膵臓で作られる膵酵素(消化酵素)が膵臓内で暴走してしまい自分の膵臓自身や、膵臓からお腹に漏れて周囲の脂肪を溶かしてしまう恐ろしい病気です。動物は嘔吐や腹痛で苦しみます。

 

 実は多いんです!~猫ちゃんの「慢性膵炎」という病気~

犬では、脂肪の多い食事などをきっかけに急に嘔吐・下痢してぐったりといったような急性膵炎が多いのに対し、猫では特に症状もなく経過する慢性膵炎が多いと言われています。

 

ある論文による報告では、膵炎とは無関係の病気などで亡くなった猫約120頭を剖検したところ、そのうち60%の猫の膵臓に慢性膵炎が認められたという報告があります。

 

しかしながら、猫の膵炎の診断はこれまで大変難しいものでしたので、なかなか病気の解明が進んできませんでした。

 

猫ちゃんの「膵炎」を診断するには

猫の膵炎の診断には、超音波検査や膵特異的リパーゼ(PLI)検査などがあります。

膵炎における超音波検査は、急性膵炎の症例では典型的な膵炎パターンが描出できる例もありますが、その診断精度は1/3(約30%くらい)と言われています。

 

もっと診断精度が高い検査に、血液検査(膵特異的リパーゼ)がありますが、検査結果が出るのに数日かかるのと、費用が¥7,560と高額な検査となります。

しかし、IDEXX社の報告では、その診断精度は、中等度~重度の膵炎ではほぼ100%と大変優れている検査です。

SpecfPL

(以前は、アメリカまで血清を送付して測定してもらっていましたが、現在では日本国内で検査が可能になりましたので大変助かっています。)

 

 猫ちゃんの「急性膵炎」のサインに注意を・・・

猫ちゃんの急性膵炎は、一度嘔吐をしてそれから急激にグッタリしてしまうことが多いと言われます。犬の膵炎のように何度も吐くことはまれで、嘔吐症状を伴わないケースも約50%と言われています。

 

低体温(体温が平熱より下がる)や嗜眠(ボーっとして意識が弱くなり反応が薄くなる)なども特徴的な症状です。

また、猫は痛みを隠す動物ですが、抱き上げた時に思わず漏らしてしまったような声で鳴いたり、丸くなって寝ずに変な姿勢で寝ていたりといった痛みのサインも非常に大事です。

 

こういった症状が見られたら、急性膵炎の検査(超音波検査・膵特異的リパーゼ)をお勧めします。

 

猫ちゃんの「糖尿病」の発症原因の究明にも・・・

また、猫にも糖尿病という病気があります。

猫の糖尿病は、肥満や高脂血症、歯周病といった様々なインスリン抵抗性(インスリンを効きにくくしてしまう体の中の要因)が発症に関係していると言われていますが、その代表的な病態が「慢性膵炎」と近年言われています。

 

報告によると、糖尿病の猫の約半数以上が膵炎を発症しているというデータもありますので、糖尿病の追加検査にも膵臓検査をお勧めします。